2020年と比較的最近登場した資格で注目を集めている異文化カウンセラー。
「異文化」と聞くと外国人とのコミュニケーションに関わる資格だとイメージできますが、実際の異文化カウンセラーを取得するメリットや資格取得の難易度、合格率はどの程度のものなのでしょうか?
この記事で詳しく解説していきます。
目次
異文化カウンセラーとは?
※異文化カウンセラーの個人向け認定証と資格証(引用元:異文化カウンセラー認定講座公式サイト)
まず異文化カウンセラーを一言で言うと、文化や言語の異なる外国人と円滑なコミュニケーションができることを証明する資格です。
2020年に一般社団法人国際コミュニケーション支援協会が設立した資格で、現在は専門の講座を修了することで「異文化カウンセラー資格」が認定されます。
専門の「講座」ということで勘違いしがちですが、異文化カウンセラーはれっきとした「資格(民間資格)」であり、認定されれば履歴書にも記載することが可能です。
異文化カウンセラーの資格取得者の役割としては、以下のような内容が期待されます。
- 外国人労働者の不安や悩みを聞き出すメンタルケア
- 失踪防止、離職率減少などの職場環境改善
- 外国人労働者、日本人労働者の相互理解を促進し、円滑な職場関係を構築する橋渡し役
資格誕生の背景は外国人労働者の増加、劣悪な職場環境
近年の日本は外国人労働者数が右肩上がりで上昇し続けており、今や企業の戦力としても欠かせない存在です。
実際、厚生労働省が発表している外国人労働者数の推移でも、コロナの余波が続いている2022年でさえ、過去最高(182.3万人)を記録しています。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/001044543.pdf
1993年にはニュースでもよく聞く技能実習生制度、そして2020年4月には人手不足が深刻となっている業種において即戦力人材の就労が可能になった「特定技能」という在留資格もスタートしました。
今後も多くの日本の業種において、外国人労働者の受け入れがますます増えていくでしょう。
そこで重要になってくるのが、元々の文化・言語が異なる外国人と日本人との職場でのコミュニケーションです。
仕事を円滑に進めるためには、異なる文化背景で育った人同士の相互理解が欠かせません。
しかし、現状では残念なことにお互いの意思疎通の難しさや劣悪な労働環境といった要因で、技能実習生などの外国人就労者が失踪するケースも発生しています。
「この船に乗ったらあなたはロボット。人間じゃない。働け働け」
兵庫県北部の漁協に所属する漁船に乗っていたインドネシア出身のモハマッドさん(27)=仮名=は当時、船長から同じ暴言を何度も浴びせられていた。船員にはヘルメットの上から頭を殴られた。
モハマッドさんによると、正月とゴールデンウイーク以外に固定の休みはほぼなく、天候に合わせて呼び出され、3日~2週間の漁へ。眠る間もなく作業が続くこともあり、1日休んで翌日には呼び出された。
日本人乗組員の年収は1千万円以上と聞いたが、実習生の給料は月10万円ほどだった。食事も喉を通らなくなり、来日前より体重が20キロ減った。相談できる日本人はいなかった。「もう無理」と2022年9月、リュック1個を持って飛び出した。
引用元:「あなたはロボット、働け」外国人実習生の失踪相次ぐ 夢描き、技術学ぶはずが…低賃金で過重労働(神戸新聞NEXT)
上記のニュースのように失踪まではしてなくとも、現場の日本人とうまく意思疎通ができていない外国人労働者、逆に外国人とどう向き合えばいいか悩んでいる日本人労働者も世の中には多数いるのではないでしょうか。
今後も増加が想定される外国人労働者にいかに安心して働いてもらうか...という課題は、人口減少が懸念される日本でも重要な課題です。
そのような外国人と日本人の精神的・文化的な障壁を解消し、離職率の改善や職場の人間関係の改善などを目的として誕生したのが、この異文化カウンセラーという資格です。
※ 公式サイトへリンクします
異文化カウンセラー取得のメリット
実際に異文化カウンセラーの認定資格を得ることで、どんなメリットがあるのかを解説していきます。
メリット1:今後も高い需要が見込める
先ほどの厚生労働省のデータの通り、日本における外国人労働者の受け入れは今後も増加していく可能性が高いです。
10年前の2012年と比べると労働者数はおよそ3倍程度まで増加しています。
特に「資格外活動」「技能実習」「専門的・技術的分野の在留資格」の伸びが顕著で、ここに「特定技能」の在留資格が加わることにより、受け入れ人数の加速度的増加が考えられます。
当然受け入れ人数が増えるほど、職場における外国人労働者の人数も増加します。
日本人同士でさえ職場の人間関係でストレスを抱えることが多い現代社会では、外国人労働者が増加することによる対策を何もしていなければ、職場の軋轢などのトラブル増加は必至です。
こういった課題を解決できる異文化カウンセラーの資格取得者は、今後も職場での需要が増加していくでしょう。
特に外国人労働者が多い会社の管理部門の方、外国人労働者に指示を出す機会が多い方はぜひ取得を検討しておきたいところです。
メリット2:個人は履歴書に書ける。企業は社外に向けてのアピールになる。
異文化カウンセラーは民間資格のため、履歴書に資格名を掲載することが可能です。
外国人労働者が多い職場に転職を考えている人は、他の応募者とのスキルの差別化になるでしょう。
特に、特定技能の在留資格として指定されている以下の12の業種には今後も外国人労働者の増加が見込まれます。
特定技能の対象となる12分野
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野
- 建設業
- 造船・舶用業
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
上記の業種に属する組織で働く場合は、同僚としてだけではなく、上司として外国人労働者に指示を出す機会も増えるでしょう。
あらかじめ資格を取得していくと、書類選考や面接での自己アピールの材料になるかもしれません。
また、企業においても在籍している社員の中に異文化カウンセラー資格保有者が存在する場合は、「資格保有者 常駐企業証明シール」によってアピールすることができます。
※異文化カウンセラー資格保有者が在籍している企業に与えられる証明シール(引用元:異文化カウンセラー認定講座公式サイト)
シールは常駐している異文化カウンセラー保有社員の人数によって、金・銀・銅のランクに分けられます。
「私の会社は外国人サポート積極推進企業としてお墨付きを与えられています!」と言うことの証明です。
今後、積極的に技能実習生などの外国人労働者を採用していきたい企業にとっては、安定した職場環境であることをアピールする1つの材料になるでしょう。
メリット3:異文化理解や外国人労働者のメンタルケアの知識を体系的に最短1ヶ月程度で学べる
異文化カウンセラーが登場するまでは、外国人労働者のメンタルケアや相互理解に関する知識を体系的に学べる機会はほとんどありませんでした。
認定講座の学習、資格取得を通じて外国人と日本人の意思疎通の知識を身につけることで仕事の幅を広げることができますし、
「外国人がどのような文法で言語を扱っているのか」
「どのような文化で育ってきたのか?日本との違いは何か?」
「なぜ職場の外国人労働者の同僚は、私の言うことを理解してくれないのか?」
こういった疑問や職場で感じたモヤモヤを解消することにも役立ちます。
また、これらの知識を最短で1ヶ月〜平均3ヶ月程度で身に付けられる点も大きなメリットです。
特に仕事が忙しい社会人にとって、網羅的な知識を短期間で無理なく身につけられる点は、コストパフォーマンスの面でも非常に優れていると言えるでしょう。
※ 公式サイトへリンクします
異文化カウンセラー認定講座の概要とカリキュラム
※引用元:異文化カウンセラー認定講座公式サイト
ここからは国際コミュニケーション支援協会が実施する、異文化カウンセラーの認定講座の概要をお伝えします。まとめると、以下の通りです。
受講資格 | なし。年齢・学歴・資格に関係なく受講可能 |
受講料金(個人) | ・受講費用:150,000円 ・理解度試験費用:20,000円 ・認定試験費用:30,000円 →合計:200,000円(税別) ※毎月先着20名は取得応援価格 "165,000円(消費税なし) "で受講可能 |
更新費用 | 10,000円(2年間有効) |
受講方法 | 通信制 |
勉強期間の目安 | 最短1ヶ月程度 / 基本は3ヶ月程度 |
認定試験の形式 | 外国人を相手とした模擬カウンセリング(ビデオ会議) |
試験日程 | 月2回程度 |
※法人向けの訪問型研修も実施中(料金300,000円で参加は20名まで。以降、1名増加ごとに10,000円追加)
講座受講の流れとしては、まずテキストにて各カリキュラムの学習を1ヶ月〜2ヶ月半ほど行います(区切りごとに理解度テストを実施)。
その後、認定試験を受験し、合格すれば見事認定資格がもらえる...という流れです。
各カリキュラムの内容は以下の通りになります。
- 第1章 カウンセリングの基本
- 第2章 聴き方のテクニック
- 第3章 心理学と精神医学の基礎知識
- 第4章 異文化カウンセラーに期待されること
- 第5章 異文化カウンセラーの活動規範と倫理
- 第6章 異文化理解〈前編〉
- 第7章 異文化理解〈後編〉
- 第8章 育成とフィードバック
- 第9章 職場環境とこれからのダイバーシティ
- 第10章 認定試験(模擬カウンセリング)
第1章の「カウンセリングの基本」から第9章の「職場環境とこれからのダイバーシティ」までを受講し、最後に認定試験...という流れになります。
全体的な内容としては「外国と日本の相互理解・異文化理解」と言う側面があるため、日本語学校の教師をはじめとした外国人スタッフと関わる機会が多い方ほど、学習しやすい内容だと言えるでしょう。
しっかり講座の内容を理解すれば合格率は高い資格
気になる資格の合格率ですが、公式サイトなどには特にデータの記載がなかったため、講座の公式サイトから問い合わせをしてみました。
スタッフの方からいただいた回答を要約すると以下の通りです。
認定試験は落とすことが目的ではないので、模擬カウンセリングの内容に問題がなければ資格は取得できます。
しかし、合格基準に達していない場合は、認定試験を複数回受けてもらうケースも考えられます。
...つまり、講座の内容をしっかり理解した上で認定試験(模擬カウンセリング)を受ければ、基本的には難易度はかなり優しい部類の資格だといえるでしょう。
受講料金は一見するとやや高いが需要を考えるとコスパは悪くない
気になるのが講座の受講料金です。
毎月先着20名まで割引があるとはいえ、その金額は16万5,000円。
テキスト代や講座費用がすべて込み込みとはいえ、やはり高いと感じる方が多いと思います。
しかしながら、宅建などの難関資格でもスクールに通う場合はテキスト代や受験費用、登録費用なども含めると十数万円程度になるでしょう。
異文化カウンセラーの認定講座の費用とあまり変わりません。
また、異文化カウンセラーの講座は今後需要が増すことで更なる値上がりも考えられます。
検討している人は、毎月の先着20名に早めに応募して講座を受けることがコストパフォーマンスを考えると1番ベストな方法でしょう。
まとめ:外国人スタッフと多く関わる人にはおすすめの資格
以上、異文化カウンセラーの資格概要や合格率・難易度を解説しました。
先ほどもお伝えした通り、基本的に認定講座の内容をしっかりと理解すれば取得は難しくありません。
外国人スタッフを管理・指揮する機会が多い人は、取得しておくことで今後のスキルアップにも活かせる資格です。
※ 公式サイトへリンクします